LP12 system, ortofon RMG 212i & SPU Century

LP12 と ortofon RMG トーンアームの組み合わせ。
今回組み上げた LP12システムは ortofon SPU カートリッジ専用。「専用」と書くと非常に限られた使用範囲と思われるかもしれませんが、LINN純正トーンアームを使用した際の取り付け可能なカートリッジの数と実はさほど変わりません。LINN純正トーンアームには自重が軽く、軽針圧のカートリッジを推奨しています。その他に重要なのはカートリッジのサイズ。純正アームのヘッドシェルも世代によって改良され現在のシェルサイズは以前より大きくなりましたが、取り付け可能な他社製カートリッジにはまだ制約があります。どんなサイズのカートリッジでも取り付け可能な仕様にするのではなく、フローティングシステムと自社アームの動作環境に最適とする範囲内のカートリッジを取り付けて最高のパフォーマンスを引き出すことを前提につくられているからです。LP12が魅力的なのはここからで、ortofon SPU 専用アームという設定が可能ということ。ortofon にも自社の SPU カートリッジとの組み合わせに最適な専用設計にて製作されたRMGトーンアームがあります。カートリッジの使用範囲をある程度限定し、シンプルで美しい造形に仕上げています。このアームのデザインは LINN LP12 と ortofon SPU カートリッジ という一見異種と思えるお互いの個性を見事に美しくマリアージュします。ここまでくれば 細かい拘りも発揮してLP12 のアームボードもクラシックロゴ仕様でセッティング。世界中に溢れる様々なカートリッジの誘惑を一切断ち、ステレオカートリッジの始祖というべき SPU カートリッジのみにレコード再生の時間を託す贅沢さ。

久しぶりに LP12 の展示カラーをウォールナットで1台追加してみました。ここ最近、お客様からはオークのご注文が多く、そのご要望に沿って展示品もオークで数台並べていました。天然木のキャビネットはそれぞれに表情が異なりオークと言っても数台並べるだけでその表情の違いを見る事ができます。シンプルなデザインの LP12 ですがひとつひとつキャビネットの表情が異なる事でまさに世界で一台のレコードプレーヤーを手にする気持ちが強くなります。今回キャビネットをウォールナットにする事で気づいたこと、ortofon RMG 212i で SPU カートリッジ専用として組み合わせたオルトフォン100周年記念モデル SPU Century 、カートリッジキャビネットのボトルカバーには天然無垢材を使用しています。このボトルカバーのブナ材と LP12 ウォールナットの相性の良さ、見れば見るほどこの組み合わせの為のものだと思わされる雰囲気を纏っています。現行品のSPUカートリッジだけでも選ぶのに苦労するほどラインアップはありますが、SPU Century の為に組み上げたレコードプレーヤーだとしても決して贅沢ではありません。

そもそもレコード再生はあらゆる制約、条件の中で動作をさせ再生を楽しむもの。これら無数の条件、制約の中で動作する為にはプレーヤー側で動作の決まり事を設ける必要があります。制約を設ける事で可能性を狭めるのではなく、目的を絞る事で無数に存在する条件、制約からはむしろ解放されその中で最高のパフォーマンスを実現することができます。そして、レコード溝と針先との接点は他のどこからも干渉されずその一点をトレースし続ける事ができるのです。その連続が音になり、やがて音楽として聴こえてくる、この瞬間に立ち会える喜びはそれが例え毎日毎時間だとしても決して飽きる事がない悦なる連鎖なのです。

あと一枚だけ再生できるとなった時、はたしてどの盤を選ぶのだと考える時間が時々あります。今、どのレコードに針を落としたいか、それを想像するだけでも楽しい時間になる。だからオーディオは音を出している時だけがその役目なのではなく、その時を待っている姿もまた逞しくあるのです。