Aavik U-150
当初は短い期間の予定にしていた Aavik U-300 は意外と長くフロアーで再生することになり、こういう製品は触れば触るほど、聴けば聴くほどにじわじわとその魅力を知ることになるので恐ろしいものです。毎日触っていて何が良いかと聞かれればやはり大型ボリュームの感触でしょう、手で掴めるちょうど良い大きさにトルク感、重過ぎず軽過ぎず。製品フロントフェイスにコレだけという状態なのでつくる方としてもこの感触には相当に拘ったのだと思いますし、私に限って言えばその作戦は十分に成功しています。こういった製品で言うと、つまみの形状や質、更にはそれらの動作する感触まで、音を聴く前にこれらのつくり込みで製品の意気込みがおおよそ判断できます。稀に、なぜにこの場所にこんなツマミを付けたのか、というような残念なものもあり、そういった製品はボリュームを上げる前から気持ちが萎えてしまうのです。375万円のプリメインアンプと聞けば、現行販売するプリメインアンプの中でも相当にハイエンドなクラスとなり、価格以上にこちらは気持ちを構えることになります。それでもこの製品は仕上げから手触りに至るまでその感触だけで、なんだかその(価格という)ハードルを心持ち下げてくれる上質な仕上がりを感じさせてくれるのでした。セパレートではなく上質な一体型を選ぶとすれば、最低限それくらいのものでなければ手を伸ばす価値はないですよね。
さてその U-300 の後を追って、少し価格を抑えた U-150 が発売されました。アルマイト処理のアルミニウム製、マットブラックの U-300からシルバーの設定となった U-150、ヒートシンクを兼ねたキャビネット両翼の丸型抜きデザインも U-150 ではスリットタイプとしています。何よりフロントデザインが大きく異なり、大きなドット表示の入力とボリューム、お互い共通している大型のボリュームつまみはそのままにその入力とボリューム表示を左右に確認する事ができます。プレス画像だけで U-150 を見たときは、アレ、なんだかちょっと残念な雰囲気かも…と思ったりしたのですが、実際の製品を見て触っているうちに気持ちが変わったのは正直なところ。ミュート、電源、入力切替の小さなボタンが大きなつまみの上に3つだけ配置されているのは U-300、U-150 共通のデザイン且つ操作方法なので、この機構に関してはつくり手の力の入れようと製品の軸となる事がよく分かります。むしろ価格的にU-300の半分以下に設定した U-150 でもこの機構を落とし込んでいるとすれば、U-150 に俄然興味が湧いてくるというものです。
U-150 はスタンダードとして3系統のRCAライン入力モデルとしての設定となります、U-300 はライン入力に加えデジタル入力、フォノ入力がスタンダード設定されていますが、U-150ではオプションとして選ぶ設定となります。フォノが必要ない、というような方も多いですからね。ただし油断ならないのは、U-300 で試聴したフォノ入力の素晴らしさ、これは念の為ここに書き残しておきます。U-150 では U-300 と同じデジタル、フォノ基盤を各50万円にて搭載する事ができます。ライン専用プリメインアンプとして使用する場合はスタンダードに155万円。今となってはDクラスアンプと聞いて尖ったようなキツめの音を想像する方はもういないと思いますが、U-300 がそうだったようにどこまでもナチュラルに流れるような帯域バランスの見事さを U-150でも感じる事ができます。MAGICO A3 をラクラクとドライブする300W/ch(8Ω)のプリメインアンプはまだまだ底知れずという感触で、ちょうどフロアーに来ている Focal Maestro Utopia Evo のような大型スピーカーでもきっと楽に鳴らしてしまうだろうなと思わせるのです。それはまた、時間を見つけてセッティングしてみたいと思います。
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