Essence
Studio Franco Serblin
「Guest & Talk」にて野田さんとのインタビューでも(意図せず)そのメインとなった Franco Serblin その人についての内容、今読み返しても面白いものです。お時間があれば是非。ある年のオーディオショウの片隅でふと足を止めたあの瞬間の出会い、全ては運命と考えたとしてもあの場所で立ち止まった野田さんの目と感性がなければ世界的な認知度は当然のこととは言え現在の国内における Sonus faber というブランドの価値はここまで大きく無かったと言ってもそれほど間違いではないはずです。そのブランドにおいて日本国内における評価と爆発的な人気がその後の世界進出の後押しをした事も、独特で特異なオーディオ文化を築き上げる私たちの、大袈裟に言えば誇りでもあると思えるのです。これだけ美しく趣向的で機能美を備えたスピーカーはこれからもそれを超えるものが出ないのではないかと言ってしまうと、後ろ向きなことではなく、それだけひとつの様式美を確立させたという事なのだと思います。今振り返ると自然な流れだとも思える Sonus faber というブランドとは別に Franco Serblin が自身の名で新たにプロジェクトを立ち上げたという話はきっと日本国内での噂が一番早かったのだと思います。小型のものから大型のスピーカーまでそれこそ幅広く送り出してきた彼のプライベートブランドから届けられたブックシェルフの Accordo は、まさか日本へのプレゼントではないかと思わせるほどのサイズとデザインでした。
無垢材を使用したキャビネットと優美なフォルムは Sonus faber での処女作 Electa Amator のそれと感じるものが同じであることに驚きます。音を出す、再生をするという前に、所有欲をこれほど掻き立てる製品だと感じさせる力。いまでも初代 Electa Amator を探し求める人がいるのも、当時を知る人もそうでない人も同様に近い感触を持つからだと思うのです。Accordo Essence も同じく、詳細な調整を置いておけばブックシェルフの Accordo のコンセプトを大きく変更せずそのままフロアーサイズへのリサイズとしたことも、Accordo の完成度がどれだけ高かったかを改めて思わせるもの。嬉しい欲といえば、室内楽からフルオーケストラ、トリオからビックバンドまで再生したいと思わせる演奏や録音が増えたこと。ブックシェルフではここまで、と気を使っていたところがあるとすれば、もうそこに気遣う必要は一切なくなりました。
ここまで書きましたが、驚くようなハイファイサウンドであるとか、他のスピーカーでは出ないような低域、高域を出すような素材、材質を使用しているスピーカーではありません、そこは安心してください。ごく自然に当たりまえの良質な音が聴けることに改めて気づかされるというのは、それだけが達成されているスピーカーにはなかなか分かりにくいものですが、それだけではないものを纏っていることがこの製品に付けられた名前への自信なのだと私は思います。彼自身が最も長く過ごした工房で、いつの時でもこんな音が鳴って欲しかったのではないかと思えるのです、それはただただ想像するだけのものですが。
Studio Franco Serblin
Accordo Essence:¥1,850,000 / pair
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メール:柴田 (shibata@dynamicaudio.co.jp)