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URIKA 2, Kandid, SPU Century

1973年 Linn Products 設立と同時に生産開始した Sondek LP12 は今年で48年間、変わらず生産を続けています。これだけの期間生産を続けるレコードプレーヤー自体が他になく、更にデザイン、コンセプトも変わらない。そして進化し続けながら進んでいること、当初から変更のないデザインにはアップグレードを行いながら音質を追求できるユーザーの長期的な楽しみ方を叶える一方でサポート面での絶大な安心感という両面を備えます。大小様々なレコードプレーヤーのメーカーが生産を辞めざるを得なかった時にも、LP12 だけは自然体での生産を続けてきました。

1973年の発売当初は精度高く回転するLP12本体のみを販売し、トーンアームやカートリッジは取付け可能な他社メーカーの中からユーザーが選んで組み上げるものでした。その後、トーンアームやカートリッジまで全て自社製品で組み上げられるようになりましたが他社製品との互換性は継続し、レコードプレーヤーの「組み合わせる楽しさ」を自社製品だけの枠に留めていない事もファンの多い理由でしょう。自社製ストレートタイプのシェル一体型トーンアーム、取り付け可能なカートリッジの自重やサイズを見ればある程度の制約を持っている事が分かりますが、これも一定の音質を保つ為のものだと理解できます。この制約から外れる場合には使用したいカートリッジを取り付けられる他社製トーンアームを選択することになります。純正パーツで組み上げられた LP12 で再生する音から離れる事になっても、ともすればそれが LP12 の持つ大きな個性のもうひとつの一面にもなり、そういった使い方やユーザーが決して少なくないというのも LP12 を魅力的なものにしていると言えます。

ortofon にはステレオカートリッジの原器とされる SPU というカートリッジがありこのSPU専用のトーンアームもありました。初代の美しいS字型を取り付けたい気持ちもありますが、現在手に入れやすいモデルはJ字型。LP12 のシンプルなデザインには ortofon トーンアームの中でもこのモデルがよく似合う。オルトフォンの数あるカートリッジでもSPU専用、シンプルな見た目に精度の高いダイナミック型としていることも LP12 の思想と通じるものがある。ともかく、本来LINN純正ストレートアームが最良である事を理解した上、シンプルで柔らかい曲線を持った RMG-212i が取り付けられた LP12 もまた美しい佇まい。どのSPUを使おうか、この選択肢もまた豊富に用意されているので楽しみが尽きません。

私の手元にはなかなか同時に揃うことがないであろう2台の LP12 が準備できた時がありました。一台は現在のフラッグシップモデル Klimax LP12、もう一台は Klimax LP12 のトーンアームを ortofon RMG-212i、カートリッジを SPU Century に変更したもの。もちろんフォノイコライザーはどちらも URIKA 2 となるので、Klimax DSM を使用した Exakt Link 接続での再生を行います。Linn URIKA 2 & ortofon RMG-212i & SPU Century というセッティングを聴くことだけでも魅力的な事ですが、Klimax LP12 を隣に置きお互いの音の世界を堪能できる時間は相当に幸せなものでした。

この2台を並べて試聴できるタイミングが来るとは思いもよらず、短い期間でしたが再生できる時間を大切に使いました。比較してどちらがどれだけ良いかというのはあまり必要では無いと思います、LP12 が求める最高のパフォーマンスは Klimax LP12 というかたちで完成されているのでそれは揺るがないのですから。そこから少し外れた LP12 のもう一面を見る楽しさ、佇まいまで含めた組み上げのカスタマイズ、それによって使う事が叶う SPU Century というカートリッジ。これをLINN 最新のフォノイコライザー URIKA 2 を経由して聴く事ができるシステム、魅力があり過ぎて困ります。