Trilogy / Joep Beving (Deutsche Grammophon, 137576)

どの時間にいても聴きたくなる、いま最も気になる存在のひとり。どこまでも穏やかに包み込むような指先の動きを想像させる音のなか、時折不穏な雰囲気も織り交ぜて進むいくつかのストーリーのようでもあります。それもあり一度針を落とすと最後まで聴かずにはいられない奇妙な引力が働き続けてしまい、なかなか戻ることができません。演奏にも現れるその懐の深さは、実際に本人が2m超えという身長の大柄な存在というのもあるのかどうか。求める音への創造力が生み出したピアノの演奏法や使い方も含めて、この世界にどっぷりと浸る誘惑を自分のオーディオで再生する楽しみが一段と増していくのです。