
オーディオで再生する音を言葉で表すときに静けさや無音の上品さを表現することがあります、S/Nの高さを実際の再生の体験で味わうこともあります。音のある部分と無い部分を目で見るように、同時に耳で聴いてその演奏を感じていることは当たり前のようで実はとても貴重な時間。レコード再生には、時に長い時代を経たクタクタの盤もあり針を落としてみると無音などは一切無いものがあります。ノイズだらけの無音溝をトレースしながらやがて演奏が始まるのですが、不思議なことに演奏が聴こえてくるとそれまでのノイズはキャンセルされ演奏だけに集中しています。その一曲が終わって次の曲への無音溝にかかるとまた盛大にノイズが聴こえ、演奏中もこのノイズは絶えず発生していたのですが、意識が演奏に集中するとそういった聴こえ方をするのも面白いのです。

デジタル再生におけるS/Nの高さはもう恐ろしいほどになっていて、そのことを意識して再生を聴くという行為が必要ないほどの世界に突入しています。無音とのコントラストが明確になればなるほど、オーディオ機器としてはその評価が一定数高くなります。でも、そこだけを強調する機器にばかり惚れ込んでしまうことも多くはありません。音のある部分と無い部分、光と影のようなバランスはオーディオ再生においても興味の尽きないところではあります。
