Wilson Benesch The Cardinal
先日、Wilson Benesch は The Endeavour を迎えて再生しました。お世辞にもコンパクトとは言えないサイズでしたが、それは The Cardinal をコンパクトにしたというもので単体で小さいサイズだと言っているわけではないことを認識するのに多少時間がかかりました。確かに、The Endeavour の世界は後を引くもので、ウーファーのアイソバリックが特徴的な絵の広さはキャビネット剛性も相まってキレの良いサウンドに定位感、音数の多い演奏にも余裕のステージを演出し、小音量時でもスピーカーの中央少し奥に浮き立たせる音像の見事なこと。これらを何事もないように魅せてくれるそのパフォーマンスに、後を引いてしまうのでした。
その感触がまだ消えないうち、その The Cardinal をフロアーに迎えることに。順番が良かったのか悪かったのかはさておいて、Wilson Benesch リファレンスモデル、最上位モデルの再生となりました。外観だけみると過去作の Bishop を思わせる佇まいもありますが、その中身は全く新しいフラッグシップとしての登場となっています。
多少の遠近感もあり比べるに難しい画像になっているかもしれませんが、1.5mほど後ろに設置しているのが JBL K2 S9900 、これがなんだか可愛いサイズに見えてくるほど。高さ1735mmと言えばちょうど私と同じ、確かに横に並べばその通りになります。フロントから眺めると17cmユニットに合わせたスリムなキャビネットに仕上がっていますが、奥行きはゆったりと確保してあり120kg/1本という重量は流石にその存在感で圧倒されるものがあります。2.5ウェイ7スピーカー・2パッシブユニット、画像に見える17cmユニットが4本並んでいるもののうち、一番上が中高域ユニット、一番下がパッシブユニット、そして真ん中の2本が低域用ユニット、この2本の低域用ユニットの真後ろ(キャビネット内)に更にバッフルを設け2本のユニットをそれぞれ同軸上に同ユニットをマウントしアイソバリック・システムの動作としています。その4本のユニットと部屋を分けるように切れ目があり、その上段が密閉型キャビネットになり中低域用ユニットと2.5cmの高域用ユニットが収まります、更にその切れ目にはもう一本のパッシブユニットが上部に向いて取り付けられています。
パッシブユニット以外、ユニットが受け持つ帯域分割も面白く、通常のネットワークで電気的に分割する方法を取らずツイーター用のローカット用(ロールオフ周波数5kHz)、4本のウーファー用のハイカット(500Hz)のみにネットワーク素子を使用しています。エンクロージャー容量なども計算に入れたメカニカルなフィルタリングも含めコンデンサーやコイルを使用せず、ユニットの個性が十分に発揮できる仕上がりになっていることも見逃せないところ。カーボンファイバーコンポジットによるモノコック構造、その両面にグラスファイバーを貼りダンピング効果を高め更にカーボンファイバーを貼り合わせ高い張力を作り出す。このモノコック構造体に厚さ15mmのアルミ合金製バッフルを組み合わせエンクロージャーの強度を高めているとのこと。
この文章を書きながら一曲再生していますが、キャビネット素材、剛性などのイメージからは想像もできないほど自然でソフトな音像が目の前に浮かんできます。これから様々な曲を再生してこのスピーカーからどんな音がするのか、じっくり楽しんでみたいと思います。
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