RE320 & MQ-300

前回の続き。

Focal Scala Utopia Evo を再生するシステムとして LINN KLIMAX DSM、LP12 & URIKA 2、KLIMAX SOLO/d を組み合わせました。そして前回書いたように能率の高いスピーカーである特性を活かしてパワーアンプを真空管に変更する、その場合に2機種を用意して真空管パワーアンプ同士でも異なる音の世界を見てみたいという考えで用意しました。

AD Player：LINN Akurate LP12 & URIKA 2
Player & pre amp：LINN Klimax DSM
Power amp：OCTAVE RE320 & LUXMAN MQ-300
Speakers：Focal Scala Utopia Evo
SP Cable：CHORD Sarum-T
RCA Cable：CHORD Epic

Track List
Autumn Rain/Ahmad Jamal/Blue Moon (44.1-16)
Orlando furioso act Ⅰ Aria/Cecilia Bartoli/Antonio Vivaldi (24-96)
No.1 K.285 Adagio/Flute Quartets/W.A.Mozart(44.1-16)

比較試聴を行う前後にはデジタル、レコード共に沢山の曲を再生しましたが、ここではデジタル再生のみ上記の3曲に絞っての感想を残しておきたいと思います。聴いた曲全てに感想を書いていると読み疲れて付き合いきれなくなるはずなので、ぐっとまとめてみます。

まずは2012年録音時81歳の Ahmad Jamal がNYで残したスタジオ録音、イントロのドラムから両手の鍵盤数が増えていくあたりアタックと音数の重なる演奏は OCTAVE RE320 での音立ちやキレの良さがこの曲のらしさをしっかり魅せてくれたように思います、LUXMAN MQ-300 では彼の鍵盤での遊びが少し平凡に聴こえるような雰囲気、RE320のハンドリングの高さと余裕が目立った結果でした。

バルトリのヴィヴァルディ2作目、前奏を少し聴いてからスピーカーの間に浮かび上がるように聴こえる声は MQ-300 での端正な表現がうまく重なって音程の波に一切心配をする事なく聴き続けられる、素朴で美しい響きがありました。RE320 の透明度ある音での再生も魅力的でしたが、この曲では MQ-300 での再生を繰り返し聴きたいと思わせるスポットのよく当たった音が心地良さに繋がっているのではと感じます。

3曲目はクイケン兄弟のモーツァルト/フルート四重奏曲第1番、第2楽章のアダージョを再生します。ヴィオラ、ヴァイオリン、チェロのピッツィカートの上を緩やかに物悲しく揺れるフルートの演奏は3分未満の短い時間をたっぷりと聴かせてくれます、各楽器の弦のピッツィカートをより分かりやすく聴かせてくれたのは RE320、これはやはりスピーカーを駆動する懐の深さをそのまま感じるようでその真ん中をゆっくりと揺れていくフルートの響きが実に心地良い時間。MQ-300 では RE320 ほどの音場はありませんが、不思議なほどこのサイズでちょうど良いと思わせてくれるような音、RE320のような見通しの良さではなく目の前にそのままあるような自然さを感じます。この第2楽章は何度もお互いのアンプを繋ぎ変えて再生してみましたが、最後までどちらかを決めることが出来ませんでした。

ピアノ、声楽、弦、真空管の音色の美しさを感じるにはこの3曲は申し分ないものでした。Focal Scala Utopia Evo は大型スピーカーの部類に入ります、このスピーカーサイズを目の前にして真空管パワーアンプでドライブするには少し気が重いかもしれません。が、前回も書いたように「鳴り良い」設定に仕上げてあるスピーカーは「しっかり駆動しなければ」という気持ちを第一に考えながら聴く事ではなく、組み合わせるアンプのその音色にまず耳を傾けることが出来ます。そこから先、例えばオーケストラやビックバンド、ディストーションの効いたサウンドや打ち込み系の硬質な音、録音年代、これら再生する曲のバリエーションのバランスによってアンプ選びは組み合わせや好みが広がっていくことでしょう。それでも今回の真空管パワーアンプ2製品で再生した3曲、さらに前後で再生した様々な演奏でもこのスピーカーとの組み合わせでは「足りなさ」を感じることはなく、むしろその音色の美しさに聴き惚れる時間の方が圧倒的に大きかったと思えるのです。

柴田

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