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東洋化成株式会社

すっかり時間が経ってしまったのですが、昨年末に東洋化成さんへお邪魔する事ができました。東洋化成と言えば、レコードのカッティングから印刷工場(パッケージ)までの施設を有し相当数の数量までを生産できる規模としては国内唯一のアナログプレスメーカー。レコード再生を楽しむ皆さんの棚には当然コチラでプレスされた盤が混じっている訳です。レコード屋に行きジャンル分けされた棚に大量に並んだ盤から今日の一枚を見つけ出し、家に持ち帰って針を落とすという作業を何十年も続けてきましたが棚に並んだレコードのその前の姿、レコード盤になる瞬間を見ることはありませんでした。昔はレコード屋のおじさんから聞いたり、雑誌の特集で見たり、今ではネットや動画でレコードができるまでを知る事ができます。だから知らないという訳ではないのですが、やっぱり実際に見たい。そんなこんなを思っていると機会は訪れるもので、2019年も終わりになった12月の末に向かうことになりました。

他の用事もあったのでまずはその用事をササっと済ませて、「ぞれじゃ、プレス見にいく?」ということで待ってましたのお時間となりました。当日はすでに終業時間の間際だったので足早に回ることになったのですが、なんというかやっぱり想像した通りに楽しい場所でした。塩化ビニールが高熱でプレスされるなんとも言えない匂い、規則正しい機械の動きと音、それぞれのセクションに専門スタッフが立ち定期的に機械の動作や仕上がりをチェックしている姿。一枚一枚丁寧に盤を内袋に入れる作業スペース、ピクチャー・ディスクは専用の設備となるのでその場所へも(ここがまた面白かった)。流れるようにレコード盤が出来上がるこの場所にはどれだけいても飽きないなぁと思いました。塩化ビニールはもともとほぼ透明に近く、これに強度や硬度を保つためや視覚的に溝を確認する為なども含めほんの数パーセントのカーボンを混ぜ込むと私たちが知る真っ黒い色になります。それがスタンパーを準備した皿の上に一定量絞り出され、まさにサンドイッチするように高熱でプレスされ平らに引き延ばされます。トップの画像の黒い塊は絞り出されたプレスされる直前のソレ。プレスされ引き延ばされた際に余分な量が縁に残るのですが、そのピザの耳のような余分を綺麗にカットするセクションが面白くてじっと見ていました。楽しい時間はあっという間と言うけれど、本当にその通り。

そして更に駆け足でカッティングルームへも。Neumann VMS70 & VMS80 を拝見して、あの愛聴盤もここで生まれたのかも知れないのだなと思ったりしているうちに、プレーンなラッカー盤を乗せて実際にカッティングを見せてくれました。カッターヘッドとその先のカッター針を覗き込み、今まさに音が刻まれている瞬間に感動することも短く、削られたカスがカッターヘッドに装備された掃除機の口に見事に美しく吸い込まれていく、その姿にこそ感動してしまいました。マジメな話、検聴用のカートリッジで今刻んだばかりの溝に針を落とした時、音が出るまでの無音に気づきませんでした。油断していたのか、音が出てハッとしてしまったんです。普段レコードに針を乗せると外周の無音溝で準備運動をするあの心地良いサーフェスノイズを聴くことができ、この数秒のノイズのおかげで聴く心構えが出来ていたのですが出来たてホヤホヤの溝とカートリッジにはそのようなノイズは無いのです。圧倒的な静けさと音の対比を目の前で体験してしまい暫し沈黙、まぁでもこれはあくまで特別なラッカー盤、量産のためにはそこからマスター盤、マザー盤を経てスタンパー盤を用意するので僕の手元に来る頃にはいつもの心地良いサーフェスノイズが聴けるということ。何度も書いてしまうけれど、短い時間でしたが最高に楽しいものでした。家に帰ってレコードを見る目が、少し変わりましたよ。

次回はもっとゆっくりと、話が聞ければいいなぁと思っています。

柴田

 

 

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