
清潔感のあるシステム
時間をかけて変化していく自身のオーディオシステム、音楽の好みも変われば自分自身の気持ちの変化もあり、その時その時のシステムから出てきた音が時間と瞬間の記憶として積み重なっていくことが楽しくもあります。機器を変更する前の音が恋しくなったりもして「ひょっとして前の方が良かったかも?」なんて疑心暗鬼になる不思議な時間すらも私は楽しめたりします。自分のシステム以外の場合、あの時納品させて頂いた時の音、楽曲や部屋の雰囲気まで写真のように記憶に残っていることが多くあります。ひょんな事から10数年振りに伺うことになったお客様のオーディオルームにお邪魔した時、「ここに大きなテーブルがあって座椅子がこことここ、オーディオ機器は年季のある無垢のローテーブルに格好良く並んでてこの順番で設置してありましたよね。スピーカーはあの時2setあってセレクターで切り替えるようにしていて、インドの民族舞踊の演奏を聴かせてもらってなんだか不思議な時間を過ごしたような・・・」と話し出すとお客様がビックリして「そんなことまで覚えてるの?」とお客様自身も忘れていたようなことを思い出して楽しく昔話の時間になったりします。「今はね、テレビも置くことになって子供達がゲームで大騒ぎするから家具とか全部取っ払っちゃってオーディオ機器も危ないからあそこのラックに入れ込んで、でも相変わらず素敵な音で楽しんでますよ。」なんて言ってもらえて、嬉しい限りです。「いや〜、話し出すと色々思い出して懐かしいねぇ。。。あっ、それで、今回の相談ですけど・・・」、こんな時間が大好きです。

話は変わりますが、スピーカーのご納品で作業中に機器の収まるラックの背面が目に入り、電源ケーブルやインターコネクトケーブルの引き回しとその整理の綺麗さに驚きました。もちろんホコリも無い、普通なら出来れば隠したい場所ですがこの状態なら誰に見せてもいいくらい。「後ろの配線、綺麗ですね。」とお伝えすると、「そんな事ないですよ、普段のそのままですよ。」というお返事でした。機器の扱い方も含めて、決して神経質という事ではなく大切に扱っているという様子がひとつひとつ伝わってくるようです。その一連の所作を見ているとその日のために整えたという事ではなく普段のそのままという言葉がよく分かり、「なんというか、機器の買い替えの時も音質的にとかオーディオ的にとか、そういう事ではなくて感覚的に選んでいるからそれが正しいのかどうか分かりませんし。」というお話もされていましたが、私にはそれがしっかり腑に落ちました。オーディオで音楽を聴く時間を大切にするという事が決してそのために用意した特別な事ではなく、きっと普段の生活の一部のような流れの中にあるのです。だからオーディオで音楽を聴く時間のように、それ以外の時間もきっと同じように大切にされているのだと思います。柔らかい話し方や言葉が、時間が経つ程にじわじわと伝わってくるようでした。
午後の柔らかい光が差し込む中、ムターのカルメン幻想曲はいつになくやさしく体を包み込むような演奏として聴けたように思います。珈琲を頂きながら音楽やオーディオの話をしながら「こんな話ならいつまででも出来ますよね。」と楽しそうに言われている姿が印象的でした。この時間と音もまた、記憶に残る素敵なものでした。
お問い合わせ先
電話:03-3253-5555 (担当:柴田)
メール:柴田 (shibata@dynamicaudio.co.jp)